交際費はなぜ課税されるのか?
● なぜ交際費は課税されるのか?交際費課税の経緯
時期:歴史は遡り戦後の混乱期をなんとか乗り越えた昭和29年
趣旨:日本の経済自立のための資本の蓄積推進と交際費の濫費抑制のため*1
創設:3年間の臨時立法として成立
*1 この趣旨に対する経済界の反対意見がおもしろい
・趣旨が資本蓄積ならば交際費の一部を否認しても資本蓄積には役立たず課税される分だけかえって資本蓄積を減少させることになる
・限度額があるとその限度まで使いたくなるのが心情
結果、本法としての法案成立がなされず措置法として制定
本来措置法は「租税の軽減・免除・優遇」を目的とするものであり課税措置である交際費の損金不算入は得異な存在である
● 交際費認定のポイント
①支出の相手方が事業に関係のある者等であり
②支出の目的が事業関係者等との間の親睦の度を密にして取引関係の円滑な進行を図るとともに
③行為の形態が接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為であること
● 2003年9月 東京高裁判決:製薬会社が支出した論文の英文添削料の差額負担金が交際費等に該当するか否か
判例の中で交際費について
・人間の種々の欲望を満たす支出であるためそれが非課税であれば無駄に多額に支出され企業の資本蓄積が阻害されるおそれがある
・営利の追求のあまり不当な支出によって公正な取引が阻害されひいては価格形成に歪みが生じる
・交際費で受益する者のみが免税で利益を得ることに対する国民一般の不公平感を防止する必要がある
交際行為=相手の快楽追求欲、金銭や物品の所有欲などを満足させる行為であるとしている
● 交際費等に含まれないもの
(1)寄附金(2)値引き及び割戻し(3)広告宣伝費(4)福利厚生費(5)給与等
(1)寄附金 vs 交際費
事業に関係ない者に対して金銭でした贈与は交際費に該当しない。
社会事業団体・政治団体・神社等への贈与は寄附金とする。
(2)値引き及び割戻し vs 交際費
得意先に対し一定の基準により金銭で支出する値引き及び割戻は得意先の収益に計上されるため交際費に該当しない。
※金銭に代えて得意先を旅行観劇等に招待する場合は交際費に該当
(3)広告宣伝費 vs 交際費
不特定多数*の一般消費者に対する宣伝的効果を意図するものは交際費に該当しない。
*判例では不特定多数の者の中に特定の者が含まれていることもあり広告宣伝費と交際費の区分は判断に諸事情が考慮される
*抽選等による旅行観劇招待・金品引換券付販売・試飲試食見本品試用品・継続試用謝礼等一般消費者に対し商品を宣伝するものは交際費に該当しないと列挙されているため逆に言うとそれ以外は交際費認定される可能性がある。
(4)福利厚生費 vs 交際費
企業が任意で実施する飲食会や旅行などで創立記念日等に際し一律に社内において供与される通常の飲食に要する費用及び慶弔、禍福に関する費用は交際費に該当しない。
(5) 給与 vs 交際費
常時支給される昼食費・自社製品を原価以下で販売した場合の原価に達するまでの費用、機密費接待費交際費旅費等の名目で従業員に支出したもののうちその法人の業務のために使用したことが明らかでないものは給与の性質を有するものとして交際費に含まれない。
(番外編 -1) 情報提供料 vs 交際費
情報提供等(情報提供又は取引の媒介代理あっせん)を事業としていない者に対して金品を交付した場合でも次の要件をすべて満たしていれば交際費に該当しない
・あらかじめ締結された契約に基づくものである
・役務の内容が具体的に明らかにされておりこれに基づいて実際に役務提供を受けている
・金品の額が役務の内容に照らし相当である
(番外編 - 2) 社内飲食 = 交際費
交際費の対象となる事業に関係のある者には得意先・仕入先の他その法人の役員・従業員・株主等が含まれる
社内の人間だけの飲食は社内飲食費として原則交際費となりますが下記に該当する場合を除く
・会社”全体”の忘年会での飲食代 → 福利厚生費
・会議や打ち合わせに際して出した弁当やお茶などの飲食代 → 会議費
・社外の人間が打ち上げ等に含まれている場合 → 社内飲食に該当しない
社内飲食の注意点
・1人当たり5,000円以下の飲食費を交際費等から除外する措法61の4の適用対象外
・接待飲食費50%相当額の損金算入の適用除外
参考:https://www.nouzeikyokai.or.jp/files/pdf/ronbun/2017_13/13-02.pdf