電気供給業の法人事業税について

2021年05月25日 14:39

● まえがき

みなさんは法人税も地方税も”所得”が課税標準のため赤字の会社が納税するのは地方税均等割のみだと思っていませんか?

ほとんどの会社や事業ではそうです。

でも企業規模や事業内容によっては法人所得以外の基準で税を課することがあります。

「外形標準課税」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

資本金1億円超の法人について所得以外にも”付加価値”や”資本金”をベースに事業税を徴収する制度で平成16年に導入されました。

そしてそれよりももっと昔から「電気・ガス・保険」事業については所得ではなく”収入”をベースに事業税を徴収しています。

※以下資本金1億円以下、平成2年4月1日開始事業年度を前提としています。

 

● 法人事業税の種類

法人事業税には・所得割・付加価値割・資本割・収入割があり、電気供給業・ガス供給業・保険業には収入割が適用されます。

収入割は所得(利益)ではなく収益(主に売上)に対して税金が課せられるものであり、赤字であっても売上があれば納税額が生じます。

 

● 法人事業税における電気供給業の範囲

法人事業税において電気供給業になるのは現に電気を供給している実態のある事業をいい、電気事業法に基づく登録や許可等を要する事業であるか否かを問いません。従って免許を有していても実際に売上が立つまでは電気供給業に該当せず収入割の適用はありません。

 

● 電気供給事業の課税方式

電気供給業は・発電事業・送電事業・小売事業に大きく分けられます。

・送電事業 → 収入割 

・発電事業&小売事業 → 収入割+所得割

 

● 電気供給事業の法人事業税の標準税率

※資本金1億円超or所得2,500万超or収入2億円超は超過税率

・送電事業 → 収入割 1.0%

・小売事業&発電事業 → 収入割 0.75% + 所得割 1.85% 

 

● 繰越欠損金の留意点

欠損金を繰越控除しようとする事業年度と欠損金が生じた事業年度の下記所得区分が異なる場合は欠損金を繰越控除できません。

・法第72条の2①-3 小売事業&発電事業

・法第72条の2①-1 電気供給業以外の事業

したがって事業開始初年度はまだ小売電気事業・発電事業の準備期間で売上が計上されなかったため「電気事業以外の事業」であったが、翌期以降当該事業での売上が計上され「電気事業」に該当することになった場合、電気事業以外の事業で生じた欠損金は電気事業として申告する期の所得から控除することができません。

 

● 参考:電気供給業のガイドブック

 

● (参考) 法72条の2 事業税の納税義務者等

①-1 ①-2及び72条の3以外 

   イ ロ以外の法人:付加価値割+資本割+所得割

       ロ 事業税の非課税法人・収益事業以外非課税法人・特別法人:所得割

①-2 電気供給業のうち送電事業・ガス供給業・保険業

①-3 電気供給業のうち小売事業&発電事業

   イ ロ以外の法人:収入割+付加価値割+資本割

   ロ ①-1 ロに掲げる法人(資本金1億円以下):収入割+所得割