源泉税:個人への支払は源泉に注意!

2014年03月11日 15:33

会社員は給与から所得税・住民税・社会保険料などが差し引かれて支給されていますね。日本は「申告納税制度」ですので本来は個人が「今年はこれだけ稼いだので税金をこれだけ納めます。」という申告をしなければなりませんが、給与所得者に関しては個人の代わりに会社が毎月所得税分を徴収してまとめて国に納付し年末には年末調整を行い1年分の税金を精算しさらにその報告を国及び地方公共団体に申告してくれています。これは処理を簡潔にするという意味もありますが「申告漏れ」を防ぐという目的もあります。

申告漏れを防ぐために支払う側に源泉徴収する義務があります。

給与所得者以外にも支払をする際に「支払う側に徴収・納税義務がある」報酬・料金等があります。
法人に対する支払は馬主に払う賞金以外源泉徴収義務はありませんが、個人に支払う場合は特に注意が必要です。
私は個人で税理士事務所をしていますが、私への支払については支払う側が源泉徴収しなければなりません。しかし「税理士法人」に対する支払の場合は同じ税理士報酬であっても源泉徴収する必要はありません。まずは相手が個人か法人かで判断して下さい。
 

源泉徴収しなければならない報酬・料金は限定列挙されています。

所得税法204条に源泉徴収しなければならない個人への報酬・料金が定められ、大きく分けると下記の8項目になります。
1. 原稿料や講演料など
2. 弁護士や公認会計士・司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金 
3. 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
4. プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
5. 芸能人や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
6. ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接客等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
7. プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
8. 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金
 
8項目しかないのにホステスが1項目をドドーンと占めていたり(「いわゆる」バンケットホステスと書かれていますがバンケットホステスなんてこの条文でしか見た事ないです。)モデルは芸能人じゃなくてプロスポーツ選手のくくりなんだぁと思ってみたり。この条文ができた時代の歴史背景が見えてきます。
 
が。しかし。最近の個人事業者への支払について源泉が必要なのか上記の区分だけではサッパリわかりません。。。

個人のプログラマーやエンジニア・デザイナー・スポーツトレーナーへの支払は源泉いるの?いらないの?

まず個人のプログラマーやエンジニアですが、上記区分の「 2. 弁護士や公認会計士・司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金」の中に「技術士又は技術士補に支払う報酬・料金」というのがあります。
技術士に関しては資格の有無は関係なく「高等の専門的応用能力を必要とする事項について計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務を行う人」に限り源泉徴収が必要とあります。つまり天才プログラマーに支払う場合は源泉徴収しなければいけませんが、他の人でもできるかな。という場合は源泉不要です。
ただし「業務委託」であっても他の社員と同様に会社にスペースがありPCの貸与を受けて会社の指示で業務を行っている場合、「それって社員と同じじゃないの?」ということで給与として源泉徴収する必要があるので注意です。
 
次にデザイナーですが、上記区分の「1.原稿料や講演料など」の中に「デザインの報酬」というのがあります。ウェブデザインなんかも含まれていますので個人のデザイナーに支払う場合は基本的に源泉徴収が必要です。
ただし、デザインと施工を一括して支払う場合でデザイン部分が極めて少額な場合は源泉徴収なくていいことになっていますので、コーディングとデザイン料を1人のデザイナーさんに支払う場合でほぼコーディングの作業費なんて場合は源泉不要です。
 
最後にスポーツトレーナーですが、これも上記区分の「1.原稿料や講演料など」の中に「技芸、スポーツ、知識等の教授、指導料」というのがあります。まさか原稿料や講演料のくくりにスポーツトレーナーが入るとはビックリです。
 
ということで、8項目の大区分だけではその支払に源泉徴収が必要かどうか一目でわかりませんし、各項目ごとに細かく見ていっても該当するのかしないのか状況によっても異なり判断が難しいです。さらに法人であっても海外に支払う場合は源泉徴収が必要なケースもありますし、請求書に▲源泉徴収と書いてないからしなくていいわけでもありません。支払う側に課せられる「源泉徴収義務」は複雑で大変です。。。
 
支払う側に徴収と納税の義務がありますので支払先からの徴収が漏れてしまったことが後でわかった場合でもその分の税金を国に支払わなければなりません。支払先から後で徴収できればいいですがなかなかそうもいかないケースが多いので「支払う前に」源泉徴収の有無をしっかり確認しましょう!

ちなみに納期の特例の対象となる源泉税も決まってます。

本来毎月10日に納めなければいけない源泉徴収税額を、半年に1回でいいですよー。という「納期の特例」を受けている会社はその対象となる源泉税が決まっているので注意して下さい。納期の特例が受けられるのは給与や退職金から源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税と、「税理士、弁護士、司法書士などの一定の報酬から源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税」に限られています。
つまり上記区分の「2. 弁護士や公認会計士・司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金 」だけになります。天才プログラマーは 2.の区分なので納期の特例の対象となりますが、デザイナーやトレーナーは1.の区分なので納期の特例は受けられず徴収した翌月10日に納付しなければなりません。
 
ちなみにさらっと「所得税及び復興特別所得税」と書いてしまいましたが「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」の施行により平成25年1月1日以降源泉徴収をする場合「所得税率×102.1%」を徴収・納付することとなりました。
仮に所得税率10%の場合は10.21%が「所得税及び復興特別所得税」となります。 復興特別所得税の徴収・納税漏れがないよう気をつけて下さい。